2024年のOOH 8つのキーワードからトレンドを予測

 OOHとは、「Out of Home Media」の略で、看板、屋外広告、交通広告など、家の外で体験できる広告。これからのOOHはどうなるのでしょうか。2023年の掲出事例を振り返りながら、「デジタルサイネージ」「生成AI」「アイデア」「インバウンド」「推し活」など8つのキーワードをもとに紹介。総合報道記者チーム「OOH撮影隊」が2024年のトレンドを紐解いていきます!

 【さらに詳しい解説や、広告業界関係者から普段広告を見ている人にまで実施したアンケート結果は「総合報道2024年1月5日号」をぜひご覧ください】
 ※当社X(旧Twitter)開設をともに結成。定期的に街を広告巡礼し、SNSで紹介している社内非公認組織

▼INDEX
①サイネージやビジョン 肉眼3D映像の台頭続く
②「バズる」企画で拡散狙う 「情報疲れ」への指摘も
③生成AIに熱視線 アナログ手法にも再注目
④アイデア勝負のコンテンツ作り 一方根強いファンの支持は強力
⑤多言語サインや万博 新たな販売手法、効果測定も
⑥接触型の広告・イベント復調 掲出場所はライブ会場化
⑦ジャック展開の進行 外国人観光客の名所に
⑧市民権を得た応援広告 市場規模は約166億円
まとめ

 


 

 

①サイネージやビジョン 肉眼3D映像の台頭続く

主要駅の媒体のサイネージ化、新設が進行
 今年も主要駅の媒体のサイネージ化、新設が進行するとみられます。屋外大型ビジョンでの3D動画も定着。地方にも大型サイネージが設置され、デジタル化の波は広がりつつあります。
 また再開発施設のオープンに伴いサイネージメディアが増加しています。

OOH撮影隊の目「新ランドマークに期待」
 「新宿の猫や渋谷の犬、池袋のフクロウなど、各エリアのビジョンを象徴するキャラクターが誕生。今年もランドマークとなるようなコンテンツに期待しています」

●渋谷駅構内に設置された『渋谷55ストリートビジョン』の等身大のダンサーが滑らかに踊るCGコンテンツ

●『池袋ヒットビジョン』ではフクロウが3D秋田犬とともに登場するカラクリ時計が放映

●「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」には、桜や和のモチーフのサインをはじめ、デジタルサイネージがたくさん

【JR東日本】上野・秋葉原・新宿駅を大型サイネージと一体化したショールーミングスペースへ
JR東日本の「Beyond Stations構想」により上野・秋葉原・新宿に大規模な駅型ショールーム

 


 

 

②「バズる」企画で拡散狙う 「情報疲れ」への指摘も

世界で「バズる」アイデアを
 SNSの力もあり、アイデア次第で「バズる」ことが以前より容易になった時代。OOHも工夫次第で規模感、費用に関わらずその可能性を持っています。アンケートやSNSでは、実際のデニムを使用したり、照明を効果的に活用したりしたアナログ媒体ならではのアイデアが光る広告も注目されました。
 また、キャラクターの露出表現に対するクリエイティブ。数年前は苦情が出た後から胸部や下半身に白い紙を貼る対応でしたが、現在は先んじて露出部分にキャラクター名やロゴを載せることでみだらな広告とされるのを回避しているようです。
 一方で広告を見る側からは「情報疲れ」を指摘する声も。今後は要素をたくさん詰め込んだ広告より、シンプルで感覚的なデザインにシフトするのではという予測もあります。

OOH撮影隊の目「検索するもしないも自由」
 「OOHはネットの膨大な情報を検索する大きなフックになります。また『情報疲れ』の人は『あえて深く調べない』という選択を取れるのも特徴です」

【Levi’s】ジーンズの誕生150周年を記念し、東京メトロ銀座線と丸ノ内線をジャック。世界観を内装に投影したストーリー性や、中づりで実際のデニム活用などリアルならではの表現が広告関係者から注目されました

●Netflixシリーズ『幽遊白書』の広告。霊丸が発射される様子をスポットで表現したアイデアが光ります

●あのさんを起用したLife CARDの渋谷OOHジャック。画面全体がスタイリッシュなビッグフォントとタレント画像でレイアウトされ、スクランブル交差点が広告に占拠されているイメージを醸成。またTVCMと連携し、商品の世界観をリアルと電波でリンクしています

●「デュワーズ×劇場版シティーハンター」コラボ企画「デュワーズ100t樽ハンマーBAR」イベント。クロス新宿全体を使い、アニメ作品の舞台にちなんで新宿で企画を展開。100t樽ハンマーで殴られるというユニークなイベント内容が話題化

●キャラの露出表現。露出部分にキャラクター名やロゴを載せたりポーズを工夫したりする広告を目にすることが多くなりました

キャラの露出を隠す表現(イメージ)


 

 

③生成AIに熱視線 アナログ手法にも再注目

最新テクノロジーとアナログ表現
 様々な使い方で話題を集めている生成AIは、看板、広告業界でも効果測定や顔認証によるクリエイティブの出し分け、クリエイティブ制作などに活用が期待されます。また「AIタレント」起用も進む可能性も考えられます。
 広告ジャックをする場合、アナログとデジタルをどちらも使い、お互いの長所を生かした展開が多く見られます。即時性があるデジタル媒体はもちろん、ライブペインティングなどアナログだから使える手法も注目されています。

OOH撮影隊の目「空想の世界が現実に」
 「海外の事例ですが、23年9月に開業した米ラスベガスの世界最大級のドーム型スクリーン『Sphere(スフィア)』に感銘を受けました。日本でもこのような話題性の高いアリーナ施設が期待されます」

●新宿メトロプロムナードで掲出されたパリピ孔明の広告。ポスター貼りですが、向井理さん演じる中央の諸葛孔明のサングラス部分がサイネージに。紙とデジタルを融合したクリエイティブ

●柱をラッピングしたデジタルサイネージが一列に並んだ井の頭線渋谷駅の改札周辺。TWICEのツウィさんと、THE RAMPAGEの吉野北人さんを起用したネンマクフェイクルージュの広告ジャック。男性を起用したコスメの広告も増加傾向のようです

●東横線・みなとみらい線横浜駅に、横浜F・マリノスの試合ごとに内容が変化する「リアルタイム新聞」が出現。YouTuber&画家の・小木曽誠さんがライブペインティングを実施

●バンド「U2」がこけら落としのコンサートを行った『Sphere(スフィア)』。没入感がすごそう…!

 


 

 

④アイデア勝負のコンテンツ作り 一方ファンの支持も強力

アンケートにはファンの方々から多数のコメント
 昨年表面化した大手芸能事務所の問題で、下半期に入り所属タレントの広告起用を見直す企業が相次ぎました。その波はOOHにも波及。アンケートでは「人に依存しないコンテンツが増えている印象がある」という声もあり、これからますますアイデア、企画力が問われることになりそうです。有名モデル・タレントなどを起用せず、オーディエンスを主役にする広告も記憶に新しいかと思います。
 一方、人気コンテンツの持つ『ファンの力』も感じます。今回のアンケートでは、23年5月に5人体制が終幕した「King & Prince」のファンの方々から多数の支持するコメントが寄せられました。元「King & Prince」の3人が結成した「Number_i」の動向も注目されています。

OOH撮影隊の目「はやりを街歩きで知ることも」
 「OOHで今のはやりを知ることも多かったです。例えば23年新宿や渋谷、池袋を歩くと『ちいかわ』のポップアップストアやラッピング、ジョージアの広告で米津玄師さんなどを多く見かけ、SNSでも拡散されていました」

●あえてメッセージを“目線より上”に出すことで就活生の気持ちが前向きになるようにした「視線が上がる広告」

●「BARTH」の「泥睡しよう」企画。寝顔を募集し広告に掲出したり、「泥酔するなら泥睡しない?」と呼びかけたりユーモラスな施策

●「King & Prince」23年4月リリースのベストアルバム「Mr.5」の広告は、首都圏の大型媒体で展開され、インパクトがありました。現地には多くの人たちが撮影に訪れ、SNSでも拡散されました

●ジョージアの広告は米津玄師さんを起用し、昨年大型展開を複数回実施

 


 

 

⑤多言語サインや万博 新たな販売手法、効果測定も

自治体のサイネージ基準制定も進む
 インバウンドに対応したサインが注目されています。特に外国人観光客が多い場所では、多言語サインはもっと増えるのではと考えられます。また、大阪・関西万博に向けて機運を醸成する広告も徐々に増加しています。
 販売手法に関してはDX化が徐々に浸透。効果測定もWEB広告などと同様、今後も精度の高いデータの提供が期待されます。
 先進的な自治体でデジタルサイネージの基準が少しずつ定められてきているといった声もありました。車社会の地方では、ロードサイドのサイネージ導入が進むのではないでしょうか。
 業界関連団体の動きでは、22年のタウンミーティングの議題は『安全』が多数でしたが、23年は『景観美化』への意識が高まったようです。

OOH撮影隊の目「新媒体の普及も進む」
 「新たなメディアとして『トイレ』『喫煙所』『エレベーター』など、隙間時間をターゲットにした媒体・広告の普及が進んでいます。バス・電車・自動販売機などへのラッピング広告にも注目です」

●大阪・関西万博に向けて機運を醸成。エリア一帯のサイネージで放映や、電車や飛行機にラッピング

便秘薬「ボラギノールスムーズ」はトレインジャックやトイレ広告を展開。トイレ広告ではスキマ時間で自分自身の便と向き合う機会を提供
うんち広告

 


 

 

⑥接触型の広告・イベント復調 掲出場所はライブ会場化

リアルで接触できる広告展開が増加
 新型コロナが落ち着き人流も回復したことから、ピールオフ広告・リアルイベントが増加。ピールオフできるノベルティーも多種多様になってきました。
 OOHはファンにとってイベント化しています。人気のあるコンテンツ、タレントの広告には撮影を待つ待機列が形成され、まるでライブ会場。ピールオフ広告の施工現場では、ファンが集い、今か今かと施工完了を待つ熱気を感じます。
 しかし広告に人が殺到することで、通行に支障が発生することも。安全性を考慮し、掲出期間終了前に撤去された広告事例や、「転売ヤー」がノベルティーを大量に持ち帰りフリマアプリで販売しているケースもあります。
 安全性を確保しながら見る側の満足度を高め、強い拡散力を持たせることが大切です。

OOH撮影隊の目「現場での誘導も大切」
 「いかに通行を阻害せず、盛り上がるかがかぎ。人気のピールオフ広告になにも規制がなかった際は、ライブのモッシュのような人流に巻き込まれました。関係者の方が『1人1個』といった呼びかけや、順番の列を整理した現場では、見る側も笑顔があふれ、満足度も高いようです」

●【推しの子】の「アイ」と鈴木愛理さんが登場するAmazonMusic のピールオフ広告。箔押しのサイン入りのチェキ風カードをピールオフできるもので事前に告知されていたこともあり、施工完了前からたくさんのファンが見守る人気でした

●リリース1周年を迎えた「勝利の女神:NIKKE」のピールオフ広告はずっしりしていると思ったら約18cmの立派なアクリルスタンドでした

●顔の付箋のピールオフ広告。実用的でした。高橋一生さん主演映画『岸辺露伴ルーヴルへ行く』の広告が新宿駅メトロプロムナードで展開された例

 


 

 

⑦ジャック展開の進行 外国人観光客の名所に

より強烈なジャック感のあるメディアを
 今後さらに進行するとみられる広告ジャック。新宿駅東西自由通路にある新宿ウォール456などの大型ビジョンを活用した、ジャック感のあるクリエイティブが多く見られます。
 特に渋谷スクランブル交差点で6面、13面などで行われるシンクロ放映は、外国人観光客の名所となり、観光客がスマホを構え左右に動かしながら動画を撮影する姿が特徴的で、タイムズスクエアのような名所となっている感があります。
 またファンからは、大型媒体での「推し」の放映やSNSと連動した広告ジャック展開に期待を寄せる声ありました。

OOH撮影隊の目「インバウンドを意識した展開」
 「渋谷・表参道の街中に掲出される広告はインバウンド需要を見据えたものか、ハイブランドの広告を多く見かけます。特にポスターで街全体をジャックする試みが目立っていました」

●ジョジョの奇妙な冒険 第9部「The JOJOLands」の広告は新宿駅東西自由通路のサイネージをジャック。このほか渋谷や原宿でも広告展開をしました

●「機動戦士ガンダム 水星の魔女」season2を告知する動画広告が、渋谷駅前の屋上サイネージ群をジャック。2面にまたがるガンダムなど同媒体群で流すためだけのクリエイティブのようです

 


 

 

⑧市民権を得た応援広告 市場規模は約166億円

OOHでも「推し活」拡大
 19年の冬ごろから徐々に増え始めた応援広告はすっかり市民権を得たようです。推計できる応援広告市場は約166億円、応援広告実施意向者も含めたポテンシャル市場は325億円に達しています。同時に応援広告出稿を後押しするサービスも充実してきました。
 掲出媒体は駅ポスターが主流ですが、大型展開も見られる。「にじさんじ」のメンバーの応援広告がクロス新宿ビジョンに肉眼3D映像で登場。また23年12月、「BTS」のVさんの誕生日を祝う広告が谷スクランブル交差点でシンクロ放映されました。23年4月、「JO1」のメンバー・大平祥生さんの応援広告は、フラッシュ撮影すると絵柄が浮き上がる特殊印刷を使用したものでした。
※㈱ジェイアール東日本企画(jeki)の22年末の調査

OOH撮影隊の目「さらなる広がりに期待」
 「東京ドームシティに応援広告が掲出可能になったり、スポーツチームの応援広告も出稿されはじめたり、裾野は拡大。これからはさらに気合の入ったファンのグループが大型の媒体にも掲出するのではないでしょうか」

●クロス新宿ビジョンで放映された肉眼3D映像の応援広告。にじさんじ・剣持刀也さんのLIVE『SYMPHONIA』出演を記念するもの

●BTS・Vさんの誕生日をお祝いする広告がシンクロ7シブヤヒットビジョンで放映。クリエイティブを連動させたジャック感がすごいです

「JO1」のメンバー・大平祥生さんのファン団体は、フラッシュ撮影すると絵柄が浮き出る仕掛けを施した交通広告を掲出しました
大平祥生さん応援広告

 


 

 

まとめ

 今後、主要駅や新施設などで媒体のサイネージ化はますます進行するでしょう。
 OOHも「バズる」アイデア、企画はSNSで拡散され、費用以上の効果を得ることができます。アナログ媒体ならではの表現技法も活用され、デジタル、アナログ両者の長所を生かすクリエイティブがもとめられます。
 広告業界でも生成AIをや効果測定などに、テクノロジーの活用が期待されています。
 OOHで「推し活」が盛り上がり、掲出場所は「イベント化」。活気と安全に配慮した広告展開がもとめられます。
 インバウンド需要が回復し、ハイブランドの出稿や多言語サイン、万博関連の広告などにも注目。ジャック展開も進行していくでしょう。
 応援広告市場の拡大も期待されます。

 


お知らせ

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総合報道2024年1月5日号

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