2022年OOH 5つのトレンド予測まとめ~クリエイティブ編~

 OOHとは、「Out of Home(アウト・オブ・ホーム)」の略で、看板、屋外広告、交通広告など、家の外で体験できる広告。日常生活の中でメッセージを繰り返し訴求することが得意なメディアで、街の景観をつくる影響力も持ちます。
 一方で課題としているのは効果測定とターゲティング。現在はSNSの拡散数などメディアミックスでの効果測定や、位置情報やカメラを搭載したデジタルサイネージなどを活用してのターゲティングなど、課題解決に向けて取り組まれています。

 これからのOOHはどうなるのでしょうか。2021年を振り返りながら、2022年最新の事例も追いかけ、活用方法を探ります。
 前編は、「クリエイティブ編」と題し、広告の発信内容などや手法を中心に、今後のOOHにとって注目の5つのキーワードを紹介しながら見ていきます!

▼INDEX
①大型ビジョンなどによる「肉眼3D広告」
②ファンが出稿するアイドルなどの「応援広告」
③みんなが参加できる「相互コミュニケーション型」
④考えたり、協力したり「謎解き&仕掛け型」
⑤懐かしくもポップな「ネオン風」表現
まとめ

 


 

①大型ビジョンなどによる「肉眼3D広告」

 近年、中国や韓国、マレーシアやイギリスなどの海外で、大型3D広告が話題になりました。
 遂に2021年は日本において、大型ビジョンによる「肉眼3D広告(映像)」元年とも言える年になったでしょう。7月の「新宿の三毛猫」登場を皮切りに、各地で放映されるクリエイティブが注目を集めています。L字型のビジョンが話題になる中、平面での3D表現や、2媒体を使用するクリエイティブも見られ、今後も様々な表現がされると予想しています。

●新宿駅東口の150㎡超ビジョンでは3D映像の巨大三毛猫が登場しました。
【クロススペースほか】新宿駅東口で3D映像も可能な150㎡超ビジョンの放映開始、巨大三毛猫が登場
新宿東口3D巨大三毛猫

●同じ新宿駅前の媒体で放映された広告。猫が2媒体を行き来しています。
【ソニーネットワークコミュニケーションズ】新宿の2ビジョン間を3D猫「ニャーロ」が飛び回る広告放映

 


 

②ファンが出稿するアイドルなどの「応援広告」

 アイドルなどの広告をファンが出稿する「応援広告」。元々は韓国の発祥で、K-POPのアイドルなどのデビュー記念日や誕生日を祝う内容が主流です。日本でも、公開オーディション番組をきっかけに、ファンによる出稿が増加傾向。1件当たりの出稿規模も大きくなっています。
 応援広告はファンがSNSで共有し拡散。公共の場に露出するため、企業やタレントにとってもメリットがあります。応援広告を企画されることを前提に、公式が素材を提供しているケースも存在します。
 現在、特に交通広告はコロナ禍の影響で乗客が減り、出稿数において苦戦しています。そんな交通広告にも応援広告は積極的に出稿。こうした動きがより活発になると見込んで、個人や私設ファン団体による出稿がしやすくなるよう、企業がサポートするサービスも登場しています。

●応援広告の事例をまとめた企画。JO1や、乃木坂46元メンバーの事例を掲載しています。
【次世代OOH】500人以上の参加企画も!ファンが出稿する“応援広告”(2021年4~5月事例)

●JR東日本のハウスエージェンシーから、応援広告出稿をサポートするサービスがリリースされました。
【jeki】駅や電車などでの応援広告「Cheering AD」を本格始動

 


 

③見た人が参加できる「相互コミュニケーション型」

 広告主と接触者がOOHを通じ、双方向でコミュニケーションを取る広告。大きく分けて、従来からある「接触型」、コロナ禍で台頭してきた「非接触型」が見られます。
「接触型」では、新型コロナ感染者数に少し落ち着きが見られた昨年10月頃から、広告主が貼り付けた商品を接触者が受け取るピールオフ広告を出稿する企業が久しぶりに現れました。ちなみにピールオフで配布される商品等は、基本的には争奪戦で即刻跡形もなくなります。
 また上記でも紹介した【次世代OOH】の広告では、ファンが付箋に書いたメッセージを貼る、ピールオフとは逆の手法もあります。
 「非接触型」では、例えばAIや遠隔操作のキャラクターを用い、生活者とディスプレイ越しに話すといったもの。これは店頭POPやテーマパークのアトラクションなどでも見られます。昨年出稿されたOOHでは、キャラクターが通行者とリアルタイムで話すものがありました。

●人気アニメ「呪術廻戦」の描き下ろしイラストとのコラボ企画。入浴剤を配布しました。
【バスクリン】TVアニメ「呪術廻戦」とコラボ、入浴剤のピールオフ広告を渋谷駅で実施
バスクリン×呪術廻戦渋谷広告

●「ポンタ」が通行者とリアルタイムでコミュニケーションしてくれました。
【Twitter】3D映像のポンタが新宿・池袋の大型ビジョンでコミュニケーション(ロイヤリティ マーケティング)

 


 

④考えたり、協力したり「謎解き&仕掛け型」 

 昨年12月から1月にかけ、2つの男性アイドルグループが全国各地に複数の広告を掲出し、すべての広告をつなぎ合わせるとハートフルなメッセージが浮かび上がるといった「謎解き」要素を含む広告が出現。SNSでシェアされ、ファンが協力して謎を解いていました(その謎を解く速度は思った以上に速いのです…)。現地に足を運んだ人が撮影し、シェアすることで広告が拡散、まさにオンラインとリアル、どちらも不可欠な広告展開と言えるでしょう。この時代、有観客ライブの開催が難しい中、ファンに存在を改めてPRする手法としても有効活用されています。
 また、特殊印刷などを用いて、見る方向で違うメッセージが浮かび上がる「仕掛け」が施された広告も、人々の好奇心に訴えかけるようです。

●JO1の新曲のリリースに合わせた企画。47都道府県に掲出されているOOHをつなげると1つのビジュアルが浮かびます。
【LAPONEエンタテインメント】「JO1」の広告を全国に掲出。48種をつなげて完成するデザイン

●全国にあるSexy Zoneの駅広告。赤い文字を繋げるとある言葉が…。
【Twitter】渋谷駅地下に、Sexy Zoneが昨年行った10周年ツアーのライブBlu-ray&DVD発売告知が出ていました

●特殊な印刷を利用した、行き帰りで異なるメッセージが出現する広告です。
【Twitter】大学入学共通テストに合わせた受験生応援広告を展開(明治)


 

⑤懐かしくもポップな「ネオン風」表現

 「ネオン」と言うと屋外広告塔が立ち並ぶ1970年代の最盛期を思い浮かべ、レトロな印象を受けます。
 しかし近年、女性や若者がよく訪れる商業施設や飲食店の広告、内装などにも使われ、リバイバルブームの波が来ています。韓流ドラマなどで見る、飲食店などの内装に使われている影響も考えられます。
 ネオン工事には資格が必要なため、より扱いが簡単でネオン管の代替えになるLED製品も増え、普及を後押し。カラーバリエーションもネオンと比較し、LEDは淡い色が可能など、表現に広がりを見せています。

●ネオン風LEDをガソリンスタンド屋根や洗車機キャノピーの上下、ポールサインの縦ライン演出照明に設置しています。
【ジャスト】ガソリンスタンド「南福島ジャスモールSS」を新設。キャノピーなどの照明光源にネオン風LEDを設置

●街歩きをしていると、サインや広告にネオン(風LED)的な表現が増えてきたと感じます。
【Twitter】池袋のサンシャイン周辺で発見した、ネオン(風表現)の広告物をご紹介


 

まとめ

 人流が減少傾向にあるコロナ禍。この時代背景も踏まえ、OOHもリアルとオンラインの垣根がますます取り払われていくのではないでしょうか。現地で見た人がSNS等で拡散し、SNSで見た人が現地に行った「経験」を共有する。広告主と接触者のコミュニケーション方法はますます広がっていくでしょう。
 また、マーケティングの観点からも「ファンダム(fandom、熱心なファン集団)」の動きは注目されています。今後「応援広告」はアイドルファンだけにとどまらず、様々なファンが気持ちを伝えるポピュラーな手法になっていくことが予想されます。
 加えて新しい技術にも注目。今回は3D映像や特殊印刷、ネオン風LEDを紹介しましたが、VRやARといった技術がOOHにも取り入れられ、新しい表現の誕生が期待されます。

 後編は広告出稿・展開方法などの「戦略編」です!


おまけ:OOH変遷

 これまでのOOHはどのようなものが流行ってきたのでしょうか。
 1970年代は全国各地に大型広告塔が竣工されました。ところがオイルショックによるネオンの点灯規制で、業界は縮小。70年台終盤には大手電機メーカーの広告塔が全国に竣工、復活の兆しが見えました。
 80年代はバブル経済による好景気で、たばこボードが絶頂期でした(現在は国の指針に基づく自主規制によりほぼ姿を消しています)。その後、消費者金融、自動車、通信キャリア、スマホアプリと世のトレンドに応じて各社の主要クライアントは変化していきます。
 90年代は屋外広告物の専門家「屋外広告士」資格が誕生。広告照明による環境問題や、広告効果測定など、新しい課題も見えてきました。
 2000年代には車体装飾が解禁。今では様々なラッピングが施された電車やバスが街を走ります。景観法も施行され、現在にわたり年々、街に対するOOHの責任と、景観への影響に関する意識が高まってきています。
 2010年代は札幌で看板の落下事故が発生。安全に関して意識の高まりが顕著になりました。点検はもちろん、「落ちにくい」、「風の影響を受けにくい」、「SDGs」を意識した看板づくりが注目されています。
 そして最新のOOH事情は…SNSなどと連携したメディアミックスでの出稿戦略が前提。「いかにSNSで拡散されるか」がカギとなり、多くの工夫がされています。

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