連載小説「午後の点灯式」(第2回)

社内新年会と訪問客 ②

 

 加えて業界の大手製作会社、材料メーカー、広告代理店などに営業を通じて幅広く人脈を築いていったのが大きかった。

 沢木田の耳に届く業界の情報量が豊富になり、新聞と雑誌の編集企画にも自然と反映されていった。同時に部下と同僚に押し上げられるように役職を上げたのであった。一方の城川の会社は屋外広告専門の広告代理店で彼もまた取締役営業部長の名刺を持っている。東京本社から一年前に大阪支社に城川は移動になっていた。

 ドアがノックされ、トレーの上に日本酒、缶ビール、紙皿にピーナッツなど乾きもののつまみと一緒に巻き寿司を乗せて、三人の女性編集部員の中では一番年長者の志麻かおりが入って来た。

 「失礼します。部長、こんなものしかありませんが。コンビニで何か買ってきましょうか」

 「これで十分だ。そのままテーブルに置いてくれ。志麻君、東宣興業の城川部長だ。名刺交換してもらったらどうだ」

 「一度、取材で東京本社でお会いしてます。城川部長が来ていると聞いたのでわたしがお持ちしました」

 かおりは改めて城川に挨拶するように軽く頭を下げると、

 「もう二年も前でしょうか、覚えていらっしゃいます。城川部長」

 言いながら彼女は酒のつまみを食べやすいように二つに分けた。

 「もちろんです。あなたみたいな麗人、忘れるわけがない。今は大阪勤めですが、天満橋の駅からすぐ近くに支社があります。出張の際には是非顔を見せて下さい。夕食ご馳走しますよ」

 「あら本当に、嬉しいわ。部長に言って大阪での仕事を作ってもらいます」

 「いいだろう。でも志麻君、城川さんに誘惑されないように気を付けないと」

 言葉は生真面目だったが沢木田の眼は笑っていた。城川も苦笑し、かおりもにっこり微笑んだ。

 かおりが応接室から仲間がいる賑やかしい新年会の会議室に戻って行くと、

 「冗談抜きにあの彼女、いいね」

 と城川は言った。

 「ほう、城さんもそう思うかい。彼女、取材記事をパソコンに打ち込みながら、最近は大きな金額の広告も取ってくるようになった」

 「そう、営業にも精を出しているんだね」

 「うん、彼女には何度か言ったことがある。広告料金は出稿する会社の担当者個人が身銭を切って出すわけじゃない。担当者に負担はない。その会社の預貯金から支払われるのだから、百万だろうと二百万だろうと堂々と遠慮なく貰っていいのだと。やっと理解したというか、自信を持ち始めたというか、女性部員の中では一番の成長頭だね。おかげで男子部員にもいい刺激になっている」(つづく)